札幌地方裁判所 昭和63年(ワ)5175号 判決 1990年6月29日
原告
株式会社小林運輸倉庫
被告
有限会社北海道家具運輸
主文
一 被告は、原告に対し、八七万六〇一八円及びこれに対する昭和六三年一月二九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、一八一万二六一〇円及びこれに対する昭和六三年一月二九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、原告が被告に対し、民法七一五条に基づき、接触事故による自動車の修理費用等の損害賠償を請求した事件である。
一 争いのない事実
被告の使用人である富沢強志は、被告の業務として昭和六三年一月二九日午前七時三五分ころ、虻田郡真狩村字泉六九番地大井橋路上において大型貨物自動車を運転中、原告所有の大型貨物自動車と接触した。
二 争点
原告は、富沢には路面が凍結してスリップしやすい状態であつたから、減速し、急ハンドル、急ブレーキを避け対抗車線に自車を滑走させないように運転すべき注意義務があるのにこれを怠つた過失があると主張し、被告は、右過失及び原告の損害額を争い、また、原告車両を運転していた石船勝にも大井橋の手前で一時停止しなかつた過失があるので過失相殺すべきであると主張する。
第三争点に対する判断
一 富沢の過失及び過失相殺
1 証拠(甲二の一ないし三、七の一ないし六、八の一ないし五、九の一、二、一〇の一ないし九、一一ないし一三、乙一、二、証人石船、同富沢)によれば、次の事実を認めることができる。
ア 本件接触事故が起きた大井橋は、欄干から欄干までの距離が六・六二メートル、道路端に引かれた白線間の距離が五・五〇メートルで、降雪がない状態のときでも大型貨物自動車がすれ違うには徐行しなければ危険な場所であり、本件接触事故が起きた当時は、橋の両側には積雪があり、走行できる部分がより狭められている状態であつた。
イ 大井橋から原告車が走行してきた札幌方面の道路状況は、おおむね別紙図面のとおりであり、大井橋に向かつて、約八九メートルの部分が急勾配の直線の下り坂になつており、その手前はカーブしており、右直線道路に入るとニセコ方面から走行してくる車両の状況を確認できる。
ウ 大井橋から被告車が走行してきたニセコ方面の道路状況も、おおむね別紙図面のとおりであり、大井橋に向かつて下りの直線道路が約一三五メートル続き、右直線道路上では札幌方面からの車両の状況を確認できる。
エ 富沢は、時速約三〇キロメートルでニセコ方面から大井橋に向かう下り坂の直線道路上を走行していたが、札幌方面から下り坂を大井橋に進行してくる石船運転の原告車両を認め、大井橋上での原告車両との衝突の危険を感じてブレーキをかけたところ、スリップして後部を横に振り、対抗車線にはみ出す状態で走行し、時速約一〇キロメートルの速度で大井橋に進入し、大井橋の中央付近で原告車両と接触し、前部が大井橋から出た状態で停止した。
オ 石船は、札幌方面から時速四〇ないし五〇キロメートルで進行し、下り坂の直線道路に入つたときにニセコ方面から走行してくる被告車両を認め、被告車両がスリップして対抗車線に進入しているのを見て衝突の危険を感じブレーキをかけたが止まりきれずに時速約一〇キロメートルで大井橋に進入し、大井橋の中央付近で被告車両と接触し、前部が大井橋から出ない状態で停止した。
2 以上の事実によれば、本件事故当時の道路状況からして大井橋において大型貨物自動車がすれ違うことは危険な状態であるから、富沢は、ニセコ方面から大井橋に進入してくる下り直線道路を走行するに際しては、札幌方面から走行してくる大型貨物自動車を認めたとき、大井橋手前で停止するか、又は、徐行して安全に大井橋上をすれ違うことができる速度にあらかじめ減速して走行すべき注意義務があるところ、これを怠り、大井橋の手前で停止し、あるいは、大井橋上を徐行して安全に走行することができない速度で走行した点において過失がある。
一方、札幌方面から下り直線道路を大井橋に向つて走行してきた石船においても前同様の注意義務があるところ、これを怠り、ニセコ方面から大井橋に進入してくる被告車両を認めても、大井橋手前で停止し、あるいは、徐行状態で安全に大井橋上を対抗したきた大型貨物自動車とすれ違える速度で走行しないで、時速四〇ないし五〇キロメートルで走行した点において過失を免れない。
そして、富沢と石船の双方の過失の割合は一対一とするのが相当である。
二 損害額
1 修理費 一一〇万一九六〇円(甲二の一ないし三、請求額と同じ)
2 休車による損害 四九万〇〇七六円(甲三ないし五、一四ないし一六、原告代表者、弁論の全趣旨、請求額は五一万〇六五〇円)
昭和六二年一〇月分の収益一〇七万三八二五円(原告主張と同じ)、同年一一月分の収益一一七万五五九四円(原告主張と同じ)、同年一二月分の収益九七万一〇八六円(原告主張の経費のほかに、スパイクタイヤ購入費二四万八一八〇円の一二分の三を経費として売り上げから控除し、更に、修理部品費二二八円をも控除した。)の合計額を九二日(昭和六二年一〇月から一二月までの日数)で除し、修理期間の一四日を乗じた。
(1073825+1175594+971086)÷92×14=490076
3 右損害額合計一五九万二〇三六円から五割減額すると、七九万六〇一八円となるから、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、八万円と認めるのが相当である。
(裁判官 前田順司)
別紙 <省略>